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倫理規程

日本高等教育学会倫理規程

2012年6月3日総会採択

1.前文

日本高等教育学会は、会員の活動と学会運営にあたって依拠するべき基本原則と理念を定め、本学会の倫理規程として発表する。

「会則」や「設立の趣意」に示されるように、本学会では、設立の段階からその目的として、研究の推進とともに、研究成果の普及、実践的政策的課題の解決などが想定されている。発足後の状況をみても、本学会は、狭い意味での研究者だけではなく、実践家や大学管理運営者などを含めた、高等教育研究にかかわる幅広い関係者によって組織されている。すなわち、本学会の役割と学会員の活動は、高等教育に関する研究の深化と推進だけでなく、研究成果の社会への普及、教育と研究者の育成、実践への応用と政策課題の解決などを含めたものであり、それらの総体として、高等教育研究の発展と社会の福祉に貢献することが期待されている。

これらを達成するためには、学会員としての活動に真摯に取り組み、専門的力量を高めるべきことは言うまでもない。それにくわえて、研究をはじめとする学会員の活動が社会にもたらす影響の大きさをふまえて、専門家集団として遵守すべき倫理規範を定め、社会への説明責任を果たし、高等教育研究の健全な発達を図り、もって社会との健全な関係を構築することが求められている。

2.基本原則

専門家によって構成される本学会のような組織における倫理とは、専門的な能力を高めることと誠実性とからなると考えられる。後者をさらに展開して以下の事項を基本原則とする。

(1)専門的能力の追求

  • 専門的能力を維持・向上させ、最高の水準をめざして努力すること。
  • 自分の専門知識の限界を認識して仕事を行うこと。
  • 専門性を高めるために、学問領域を超えた学会・研究者との協力を図ること。

(2)誠実性の追求

  • 研究、教育、社会への普及、研究者の育成、実践への応用などの活動において本規程の趣旨にそって真摯に取り組むこと。
  • 他者の成果を正当に評価し、自らの研究成果に対する批判には謙虚に耳を傾けること。
  • 法令、所属機関の倫理規範、手続きを尊重すること。

(3)人権の尊重

  • すべての人々、とりわけ活動の対象となる人々の価値と権利を尊重すること。
  • 活動において人種、国籍、性別、年齢、経歴、思想・宗教などによって差別せず、公平に行動すること。
  • 活動において知り得た情報を不当に利用せず、プライバシーを尊重し、秘密を守ること。

(4)高等教育への敬意と専門的責任

  • 同僚教職員の専門的立場を尊重し、協力して所属機関の向上に努めること。

(5)社会的責任

  • 高等教育が個人の成長と社会の発展に役立つよう専門的知識を活かして貢献する責任を自覚すること。
  • 活動が個人・社会に与える影響を自覚し、個人と社会の福祉に寄与するように行動すること。
  • 活動が社会からの信頼を 基盤とすることを自覚し、誠実に行動し、活動の意義や役割を説明すること。

(6)利益相反

  • 会員はその活動及び活動から得る利益と所属する機関への義務などとの衝突が生じないように、公共性・公平性に配慮して行動すること。

3.活動領域における倫理

基本原則にそった倫理の具体的なあり方は、活動範囲によって多様である。代表的な活動領域について例示する。

(1)研究活動

  • 研究費を適正に使用しつつ、研究成果の確保につとめること。
  • データの収集、記録・保存、利用におけるねつ造、改ざん、盗用などの不正行為を行わず、それらへの加担もしないこと。
  • 研究実施における搾取を禁止し、役割に応じた著作権や先取権を尊重すること。

(2)教育活動

  • 教育者として公私の区別を明確にし、学生の模範となる行動をとること。
  • 学生・生徒の人格を尊重し、学生・生徒の能力を引き出すこと。
  • 自己の専門性と教育能力を高め、教育活動および教育環境の改善・向上に努力すること。

(3)実践活動

  • 高等教育研究の成果にもとづいて実践への応用をすすめ、自己の能力の限界を認識して業務を行うこと。
  • 実践に関する諸基準を理解し、遵守すること。
  • 業務上知り得た秘密について、守秘義務をまもること。

4.倫理教育の推進

学会員の活動や立場の多様性をふまえるならば、倫理規程の制定にとどまらず、学会員の共通理解と認識の深化を図る啓蒙活動として、倫理教育を推進することも学会の責務のひとつである。